個人事業主の資金調達方法|融資・補助金の違いと選び方

お金・保険・資産形成

「個人事業主でも、事業に使うお金を借りられる?」
「融資と補助金は、どう使い分ければいい?」

開業の準備、仕事に必要な機材の購入、売上が入金されるまでの運転資金など、事業を続けるなかでは、まとまったお金が必要になる場面があります。

資金調達の方法を選ぶときは、「何に使うか」「いくら必要か」「いつまでに必要か」「調達後にどのような負担があるか」を整理することが大切です。

個人事業主も、条件に応じて公的な融資や金融機関からの借入を検討できます。補助金や売掛金の資金化など、借入以外の方法にも、それぞれ利用条件や費用があります。

この記事では、個人事業主・フリーランスが検討できる資金調達方法と、相談前に整理しておきたいポイントを解説します。

※制度・参考情報の確認日:2026年10月22日。対象者や利用条件は制度・地域などによって異なるため、利用時には各機関の公式案内を確認してください。

資金調達の前に、使い道・必要額・期限を整理する

資金調達を考えるときは、事業の計画とお金の動きを一緒に確認しましょう。

最初に、次の4点を書き出してみてください。

整理すること確認したい内容
使い道開業準備、設備購入、仕入れ、外注費など、何のためのお金か
必要額支出の総額と、事業に使える自己資金を踏まえて、いくら必要か
必要な時期何月何日までに、支払いに使える状態にしたいか
調達後の負担借入なら返済額、売掛金の資金化なら費用、補助金なら立替資金など

使い道を具体的にすると、見積書や契約書など、必要額の根拠も整理しやすくなります。

自己資金を使う場合は、事業へ回す金額と、生活費や予定支出のために残す金額を分けて考えましょう。J-Net21でも、当面の生活費を確保しながら、事業に適した調達方法を検討する考え方が紹介されています。

運転資金の不足は、入金日と支払日から確認する

日々の事業資金については、今後の入出金を日付順に並べると、不足する時期を把握できます。

資金繰り表は、将来のお金の動きと残高を確認するための資料です。売上や利益が出ていても、入金より先に支払いが来ると、手元資金が不足する場合があります。

例えば、次のような入出金を仮定してみます。

日付内容入金出金計算上の残高
1日月初の残高――20万円
10日家賃・通信費など―10万円10万円
20日外注費の支払い―25万円−15万円
30日売掛金の入金40万円―25万円

※説明用の仮の例です。マイナスは資金不足を示し、追加の資金調達や支払日程の調整は反映していません。

この例では、月末には25万円が残る計算でも、20日の支払い時点で15万円が不足します。

まず対応を考える必要があるのは、20日までの不足です。そのうえで、翌月以降の支払い、税金・保険料、既存の借入返済なども予定に加えます。

申請中の補助金や審査中の融資は、入金が確定したお金と分けて管理しましょう。

個人事業主が検討できる主な資金調達方法

主な選択肢には、次のようなものがあります。利用条件や負担の違いを確認し、自分の事業の状況に合わせて検討してください。

方法主な仕組み確認したい費用・負担
日本政策金融公庫の融資事業資金を借り、契約条件に沿って返済する利息、返済額、返済期間
銀行・信用金庫などの融資金融機関の審査を受けて借り入れる利息、手数料、担保・保証などの条件
自治体の制度融資自治体・金融機関・信用保証協会などが連携する制度を利用する利息、信用保証料、地域ごとの条件
補助金・助成金制度の目的に合う取り組みに対して支援を受ける自己負担、入金までの立替資金、報告等の対応
ファクタリング事業の売掛金などを売却して資金化する手数料、売却後の入出金、契約上の義務
購入型クラウドファンディング商品・サービスの提供を約束して資金を募る手数料、制作・提供費、支援者への対応

以下で、それぞれの違いを確認していきましょう。

1.日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫の国民生活事業は、個人事業主も検討できる事業資金の融資先です。

公庫が作成した創業融資の案内には、設備資金・運転資金の融資や、個人で事業を営む方の申込書類が掲載されています。事業の状況や計画などをもとに審査を受け、融資が決まった場合に契約・送金へ進みます。

相談時には、必要額と使い道に加えて、売上の見込みや、返済に回せるお金を説明できるようにしておきましょう。

開業前であれば、どのような商品・サービスを、誰に、どのように販売するかという事業計画も整理します。

2.銀行・信用金庫などの融資

銀行や信用金庫などから、事業資金を借り入れる方法です。

借入には審査があり、契約に沿った返済が必要です。金利に加えて、返済期間、手数料、担保や保証に関する条件も確認します。

すでに事業用口座や借入のある金融機関があれば、現在の取引状況を踏まえて相談する方法もあります。

比較するときは、「毎月いくら返すか」と「いつまで返済が続くか」の両方を確認してください。返済額を資金繰り表に加えると、調達後も支払いを続けられるか考えやすくなります。

3.自治体の制度融資・信用保証協会を利用する融資

自治体の制度融資には、自治体、金融機関、信用保証協会などが連携して、事業者の資金調達を支援する仕組みがあります。

例えば埼玉県の制度融資では、実際の融資は金融機関が行い、融資の可否は金融機関と信用保証協会の審査によって決まると案内されています。対象者、申込窓口、金利や保証料の補助などは地域・制度ごとに確認が必要です。

信用保証協会は、金融機関から事業資金を借りる際に、信用保証を通じて支援する公的機関です。個人事業主も、規模・業種・地域などの条件に応じて対象になります。

なお、保証協会が金融機関へ代わりに返済した場合も、事業者の返済義務がなくなるわけではありません。その後は保証協会への返済となります。

事業所のある都道府県・市区町村の制度融資と、地域の信用保証協会の案内を確認しましょう。

4.補助金・助成金

補助金・助成金は、制度の目的に合う取り組みに対して、必要な資金の一部などを支援する仕組みです。

原則として返済不要となる制度が多い一方、対象者、対象経費、実施期間、自己負担額などの条件があります。原則後払いで、事業の実施と報告、確認を経て資金を受け取ります。

検討するときは、公募要領で次の点を確認してください。

  • 自分の事業や取り組みが対象か
  • どの経費が支援対象になるか
  • 発注・契約・支払いを行える時期
  • 自己負担額と、入金までに必要な立替資金
  • 実績報告や、受け取った後の義務

採択されたことと、支払いに使える現金が手元にあることは別です。

特に期限の迫った支払いについては、補助金が入る予定だけを頼りにせず、実際の入金時期を確認しましょう。

5.ファクタリング

ファクタリングは、事業者が持つ売掛金などを期日前に売却し、手数料を差し引いた代金を受け取る方法です。

対象となる売掛金がある場合に検討できますが、受け取れる金額は費用によって減ります。売却後も自分で代金を回収する契約では、その後の送金義務なども確認が必要です。

金融庁は、ファクタリングという名称でも、実態が貸付けに当たるおそれのある取引について注意を呼びかけています。契約の名称に加え、回収できなかった場合の責任や費用まで確認してください。

資金繰り表では、先に受け取った売却代金と、元の売掛金を二重に自由に使える資金として数えないようにしましょう。

6.購入型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングは、商品やサービスなどの提供を約束し、プロジェクトに関心を持った人から資金を募る方法です。

新商品やサービスの企画を伝え、支援を集める仕組みですが、希望する金額が集まるとは限りません。手数料や、支援者に商品・サービスを提供するための費用も見込む必要があります。

募集額を考えるときは、制作費、仕入れ、配送費、各種手数料を含めて計算しましょう。集まったお金の全額を、ほかの運転資金に使えるわけではありません。

募集にかかる期間、成立条件、入金日、提供が遅れた場合の対応も確認しておきたい点です。

自分に合う方法を選ぶときの3つの考え方

開業・設備投資では、その後の売上と支払いまで考える

開業や設備購入の資金を考えるときは、購入時に必要な金額と、その後に事業を続けるための資金を分けて整理します。

例えば、機材を購入しても、仕事の受注や売上の入金までに時間がかかる場合があります。その間の家賃、通信費、仕入れなども予定に入れましょう。

借入を利用する場合は、売上が計画を下回ったときにも返済を続けられるか、入金が遅れたときにどこまで対応できるかを確認します。

一時的な入金待ちでは、取引条件の調整も並行して考える

入金と支払いの時期がずれている場合は、資金調達とあわせて、取引の流れを見直します。

  • 請求書を予定どおりに送付できているか
  • 支払期日を過ぎた未入金がないか
  • 今後の取引で、着手金や工程ごとの請求を相談できるか
  • 支払先と、支払日程について相談する必要があるか

入金・支払い条件を変更する場合は、相手と合意した内容を記録に残してください。

期限が迫っているときは、資料の整理と相談を並行して進めましょう。

毎月不足する場合は、収支の改善と資金調達を一緒に考える

毎月同じように資金が不足する場合は、価格、利益が残る仕事の割合、経費、返済額などを見直す必要があります。

借入や有料の資金化を繰り返す場合、その返済や費用も今後の支出になります。

「今回いくら用意するか」とあわせて、次の月に同じ不足を繰り返さないために、何を変えるかを考えましょう。自分だけで整理しにくい場合は、経営相談窓口を利用する方法があります。

相談・申込みに向けて準備したい資料

相談前には、事業の状況と必要資金を説明できる資料をまとめておくと便利です。

次の表は、相談準備のための一例です。すべてが必須という意味ではなく、必要書類や対象期間は、制度・金融機関・手続きによって異なります。

説明したいこと準備する資料の例
事業の内容と今後の計画事業計画、創業計画、商品・サービスの説明、受注状況
これまでの売上や収支確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書、月別の売上資料
手元資金と既存の借入口座の入出金明細、借入残高、返済予定
資金の使い道と金額設備などの見積書、契約書、仕入れや外注の予定
資金が必要になる時期今後の入出金をまとめた資金繰り表

日本政策金融公庫の創業融資案内でも、個人で事業を営む方の資料として、申告関係書類や創業計画書、設備資金の見積書などが案内されています。

相談時には、次の点も確認しましょう。

  • 自分の事業と資金の使い道が対象になるか
  • 申込みから入金まで、どのような手続きがあるか
  • 利息・保証料・手数料などを含めた負担はいくらか
  • 借入の場合、毎月の返済額と返済期間はどうなるか
  • 予定が変わった場合、どこへ連絡すればよいか

資料がそろっていない場合は、まず相談先に必要な準備から確認してください。

資金調達に迷ったときの相談先

経営全体を整理したいときは、よろず支援拠点

資金不足の原因や、今後の事業の方向性から整理したい場合は、よろず支援拠点に相談できます。

よろず支援拠点は、国が全国に設置した、中小企業・小規模事業者向けの経営相談所です。経営に関する相談は何度でも無料で、課題に応じた助言や支援機関の紹介などを行っています。

相談する際は、「事業内容」「困っていること」「必要額」「必要な時期」をメモしておくと、自分の状況を伝えやすくなります。

参考:よろず支援拠点の案内

融資条件を確認したいときは、公庫・金融機関・信用保証協会

融資の利用条件や申込手続きを確認したい場合は、日本政策金融公庫、銀行・信用金庫、地域の信用保証協会などの窓口が相談先になります。

信用保証付き融資では、金融機関または信用保証協会で相談・申込手続きを受け付ける流れが案内されています。具体的な窓口や手順は地域ごとに確認してください。

自治体の制度融資については、事業所のある都道府県・市区町村の公式サイトで、対象者と相談窓口を確認しましょう。

個人事業主の資金調達でよくある質問

開業前の個人でも融資を相談できますか?

これから事業を始める方を対象とする融資制度があります。

日本政策金融公庫の創業融資案内でも、新たに事業を始める方が対象として示されています。利用には条件と審査があるため、創業計画や必要資金を整理して相談してください。

借入をせずに資金を用意する方法はありますか?

自己資金の活用に加えて、条件に合う補助金・助成金、購入型クラウドファンディング、事業の売掛金の資金化などがあります。

それぞれ、入金時期、費用、提供義務などが異なります。「借入ではない」という点だけで決めず、調達後に必要な対応まで確認しましょう。

補助金は、今月の支払いに使えますか?

入金時期によります。

補助金は原則後払いで、事業の実施や報告などを経て受け取る仕組みです。申請中や採択直後の金額を、そのまま今月使える現金として見込まないようにしてください。

必要な金額がわからない段階でも相談してよいですか?

まずは、現在の残高と、わかる範囲の入金・支払予定をまとめてみましょう。

そのうえで、必要額の整理から支援してほしいことを経営相談窓口へ伝えます。調達方法を決めきれていない場合も、事業の状況を整理するところから相談できます。

使い道と資金の流れを整理して、相談につなげよう

資金調達を考える最初の一歩は、必要なお金と期限を具体的にすることです。

使い道、必要額、支払日、今後の入金予定を書き出すと、どの方法を検討し、何を相談するべきかが見えてきます。

借入なら返済、補助金なら受け取るまでの資金、売掛金の資金化なら費用とその後の入出金まで確認しましょう。目の前の支払いと、事業を続けるための計画を一緒に考えることが大切です。

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